今日は私の仕事場からの小話。
現在、中学生に受動態を教えているのですが、こんな表現がでてきます。
This desk is made of wood. 「この机は木でできている」
学校で習う”be made of ~”の表現。「〜でできている」という意味なのですが、多くの参考書には次のような表現と一緒に登場します。
Wine is made from grapes. 「ワインはぶどうでできている」
“be made of ~”には、まぎらわしい”be made from~”という表現があります。どちらも「〜でできている」という意味ですが、次のように違いが説明されていることがあります。
- be made of の後には、何で作られたか見てわかる場合で、いわゆる「材料」 が来る。
- be made fromの後には、加工されており何で作られたかすぐに見てもわからない、いわゆる「原料」が来る。
木製の机は、たいてい木目などもあらわになっているから、すぐに見て木でできているとわかるので、made of wood。ワインは、元の形を維持していないほどブドウを加工しているから、made from grapesになる、といった具合に説明されています。
「材料」「原料」の区別は必ずしも当てはまるわけではない
次の英文を見てください。
Cheese is made from milk.
ワインとブドウの関係同様、チーズも牛乳を加工しており、牛乳は原料と考えられるからbe made fromを使う、とのことです。多くの参考書にもそう書いてあるのではないでしょうか。
ここで、私はこんな風に思いました。
乳製品って、たいていの人は「牛乳」でできていることはすぐにわかるよね?
つまりそういう場合って、
Cheese is made of milk.
って言ってもいいんじゃないのか?
伝家の宝刀Google先生に聞いてみました。すると検索ヒット件数は次のように出てきました。
Cheese is made of milk : 43,600件 Cheese is made from milk : 40,900件
このデータからわかるのは、Cheese is made of milkのほうが若干ヒット件数は上回るものの、2つの用法の頻度はたいして変わらないということです。どうして頻度が変わらないのか、ということを考えてみると、次のようなことが考えられます。
「〜でできている」と言いたい時、be made of〜、be made from〜のどちらを選択するかは、その言語使用者の認識の仕方で異なる。
ヤバい留学生??
つぎの英文を見てみましょう。
①He is a student from America. ②He is a student of America.
両方とも「彼はアメリカの学生だ」という意味になりますが、普通は①のほうを使います。②の英文を聞いた人はどんな印象をうけるのでしょうか?
ofは「比較的強い所属」を表し、fromは「比較的ゆるい所属」を表します。もし、ネイティブスピーカーが、単に「アメリカで学生をしている」と言いたいような場面で、②の英文を見たり聞いたりしたら、きっとおかしな感覚に襲われてしまうはずです。
a student of America
「アメリカの学生」というよりも、「アメリカが所持している学生」、もしくは「アメリカに属している学生」といった感じがしてしまうのです。下手をすると、
「この人、国粋主義的な(ちょっとやばい感じの?)学生なのかな??」
と思われてしまいかねない表現なのです。
まとめ
be made of~とbe made from~の違い、少しはわかっていただけましたでしょうか?
cheeseの説明をするのに、made of milkと言うこともできるし、made from milkと言うこともできる。ただし、ofを使えばcheeseとmilkの距離が比較的近く、fromを使えばcheeseとmilkの距離は比較的遠い、といったニュアンスがでてしまうのです。
“a student of America”という表現に関しても、べつに間違った表現というわけではなく、使用者が意図して「そういう意味」で使ったのならば、全く問題のない表現なのです。
前置詞が本来もっている意味をおさえておくことはとても大切で、こうした微妙な意味の違いにも敏感になれます。
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