英会話は「勇気」「リハーサル」「本番」


前回の記事で、英語母語話者(ネイティブスピーカー)の英語と自分の英語を比較する必要がある、と書きました。「英語の才能」を伸ばしていくためには、ネイティブスピーカーと頻繁に触れる機会を作ることは必要です。

そうした機会を作るためには、彼らが集まっている場所に行けばいいだけです。英会話スクールなどの語学学校に通うという選択肢を取る人もいますが、それなりのお金がかかります。しかし、やる気さえあればお金をかけずともこうした機会を作ることは可能です。私がどうやってネイティブと付き合ってきたかを振り返ってみたいと思います。

 

 

お金はかけなくてもいい


私は学生時代英文科(正確には英語の英文科)でしたが、何度か語学学校へ通おうと考えた時期がありました。しかし、たくさんアルバイトをしていたわけでもなく、授業料が高く感じられたため、通うのを断念しました。

いつのころからか、なんとなく長期海外留学はせずとも独学でなんとか英語を身につけてやろうなどと思っていたため、お金をかけずに国内で効率的に英語を習得していける環境を模索しはじめました。

そんな折、通っていた大学に国際部があることを知り、世界中から集まった学生がたむろするラウンジに足繁く通うようになりました。そこで出会ったのがBible Studyと呼ばれるキリスト教の宣教師が中心になって英語で聖書を学んでいく勉強会に参加するようになりました。お金は一切かかりません。

Bible Studyにはアメリカ人とイギリス人の宣教師がいました。はじめは宗教ということに抵抗があり、多少構えていましたが、私みたいな無宗教の人間も快く歓迎してくれるアットホームな雰囲気が気に入り参加するようになりました。

日本語しかわからない学生のために通訳を任されたり、「神はいるのかいないのか?」というような私のくだらない議論にも付き合ってもらったり、いろいろ経験させてもらいました。

週一回でしたが学生時代はこうしたネイティブスピーカーと触れ合う機会を持つことができ、生の英語に触れ続けることができました。その時に出会った宣教師の人とは今でもFacebookで繋がっており、仲良くしています。

社会人になってからは、忙しくなってきたこともあり、こうした会には参加しなくなったのですが、英語教師になれたということもあって、同僚のALT(assistant language teacher)に目をつけました。私の職場では、1人のALTが週5回常駐しており、毎日英語を使う機会があります。

日本に在住している英語のネイティブスピーカーには、私たち日本人の助けを必要としている人はたくさんいます。そういった人達と日常的に親交を深めることは、自分の語学の面でも異文化交流といった面でも人生にプラスになります。かならずしもお金をかける必要はありません。探してみれば、語学ボランティアなどたくさんあるものです。お金をかけるかかけないかはその人の自由ですが、本当に英語力を向上させたいのなら、まず行動に移してすぐに環境を作りましょう。

 

 

他人の目は気にするな もっと瞬発力を


英語教師になってから、不思議に思ったことがあります。それは常駐のALTと頻繁に話をする英語教師が少ないことです。近年、日本の英語教師は社会から求められる能力が非常に高くなっています。ひと昔までは、英文が読めて、構文理解ができるくらいでよかったとされていましたが、今では「英語は英語で教えなければならない」といったような言説が世間に飛び交っています。「英語は英語で教えなければならい」ことの是非はさておき、一気に英語教師の能力の向上が求められている世の中になってきました。

自分の英語力向上の必要性を感じていない英語教師はあまりいないはずなのに、貪欲に自分の能力を向上させようという英語の先生は意外と多くありません。一緒に仕事をしていれば同僚の英語力くらいはすぐにわかるのですが、「もう向上させる必要のないくらいの英語力を有している人」は、少なくとも私の周りにはいません。

公にネイティブスピーカーと話すことはすこし勇気のいることです。自分の未熟な英語がまわりの人に聞こえてしまうし、文法的な間違いをおかしてしまえば、冷たい目で見られるのだろう、と不安になっているのではないでしょうか。

しかし、同僚にALTがいるのにもかかわらず日常的にたいして会話をしようとしない英語教師は情けなく感じます。「なぜ英語の先生は外国人の先生と英語で話をしないのだろう」と思う人も出てくるのではないでしょうか。

英語はコミュニケーションツールです。特に、英語を話す際には、このツールをかなり「瞬時に」扱わなければなりません。元『NHKラジオ英会話』の講師の岩村圭南氏がよくおっしゃっていましたが、英会話には「瞬発力」が必要です。相手が言ったことを聞いて理解して反応するのに、5秒かかってしまうとしたら、コミュニケーションの効率が非常に悪く、英語のネイティブスピーカーと信頼関係を築くことはあまり期待できません。他人の目を気にするあまり、この「英語の瞬発力を鍛える」ことをおろそかにしてしまっている人は、私たち英語教師も含め、多いのではないでしょうか。

 

 

英会話は「リハーサル」と「本番」 「仮説の検証」


英会話学校に通っている人の中には、「週に何回か英会話学校に通っているのになかなか上達しない」といったことを言う人がいます。いろいろな要素があるのでしょうが、「英会話学校に通う」ことだけに満足してしまっていないでしょうか?

私たちは日本に住んでおり、買い物もテレビ番組も特別な状況でないかぎり、すべて日本語で行っています。英語のネイティブスピーカーと接する機会は、海外で英語を学んでいる人の環境と比べれば、限定されています。この貴重な機会を最大限活かすためには、実際にネイティブスピーカーと接することのできる機会を、舞台に例えて「本番」と位置づけ、本番と次の本番までの間に入念な「リハーサル」をしていくことが必要だと考えています。

書店には英語学習関係の書籍がごまんとあります。そうした書籍はどうやって活用しているでしょうか?もし読むだけ読んで満足してしまっているとするなら、次から「この表現を今度使ってやろう」とか「自然と口をついて出てくるまで何度も練習してやろう」といったことを考えながら読んでみてください。次にネイティブスピーカーと会話する「本番」まで入念な「リハーサル」をしておいてください。このリハーサルをする人としない人で、英語力の大きな差がうまれるはずです。

優れた外国語学習者はこの「リハーサル」→「本番」の学習サイクルがしっかりしており、限られた環境の中でも英語の能力を伸ばすことができています。また、こうした人は、ネイティブスピーカーとの「本番」のやりとりの中で「仮説の検証」を繰り返し行っています。リハーサル段階で、「このように言ってみたらどんな反応が来るだろうか」とかいろんなパターンを想定して、それに対する応対に準備をしておくわけです。失敗したら、その都度フィードバックをして微調整していきます。この「仮説の検証」という作業も非常に重要なのではないかと考えています。

 

まとめ


お金をかけて英会話を勉強することは否定はしませんが、お金をかけなくても積極的に機会を求めれば英語のネイティブスピーカーと触れ合える機会は多い時代になってきました。英語を上達させるためにネイティブスピーカーと頻繁に触れ合うことはおそらく「必須項目」です。まずこれができた上で、

 

「自分で仮説を立てて、入念にリハーサルをし、仮説を検証すべく、ネイティブスピーカーと体当たりの本番に臨むことができる」

 

そういう人に私は「英語の才能」を感じます。勇気を出して、環境を整えてみましょう。


takeondo
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都内の私立学校に勤務する英語教師(英語科教諭)。学生時代に英語音声に魅了され、英語教師の道へ。とりわけ関心があるのは、英語のプロソディ(超分節音的側面)とよばれるリズム、イントネーションなど。英語朗読、英語落語にも興味があります。 Certificate of Proficiency in the Phonetics of English 2nd Class 趣味:囲碁(四段)、ランニング(ハーフ1時間30分/フル3時間40分)

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