英語力の下地を作る


英語力を伸ばしていくためにベースとなる音声知識を育てるためには、トレーニングが必要です。私がオススメするトレーニングは、シャドウイング(shadowing)です。

 

シャドウイングとは


普通の音読が単に書かれた英文を声を出して読むのに対して、流れてくる英語の音声にかぶせて音読していく活動をシャドウイング(shadowing)といいます。英語の音声を聞いてから少し時間を置いてをリピートするリピーティング(repeating)とは違い、この少し置く時間をかぎりなくゼロに近くして、ほぼ同時に発音をしていきます。音声のみに集中し文字の影響を受けないようにするため、テキストは見ないで行うのが効果的とされています(テキストを見ながら行う作業をパラレルリーディング(parallel reading)といいます)。

すぐれた学習者はこのシャドーイングという作業を人から教わることなくやることができます。私の場合、高校2年から大学4年までの間、NHKのラジオ英語講座(『英会話入門』『英会話』『やさしいビジネス英語』)を聞いていましたが、番組内で扱われているスキットを練習するコーナーでは、最初はリピーティングをやり、そこから徐々にパラレルリーディング、最終的にはシャドウイング、といった具合に練習をしていました。シャドウイングは文字を見ることができないので、最も難しい作業です。文字を見すぎてしまうと、自分流の発音(つまり日本語なまりの発音)がでてしまうこともあるので、パラレルリーディングはあまりよくないと位置づける人もいます。しかし、段階的にうまく使用すれば、そういった問題は回避できます。私が高校生の頃、自分がやっている音読練習がシャドウイングと呼ばれていることを知りませんでしたが、リピーティングをしている過程で、こうした練習は自分の英語能力を向上させていることに貢献しているのだなと感じていました。

こうしたシャドウイングに至るまでの一連の音読活動をすることで英語力の下地となる音声知識を育むことができます。英語特有の「音が繋がって聞こえる現象」も、あたりまえの現象として頭の中で処理されます。この下地があった上で、語彙を増強し、文法を学習し、表現を覚えていくことが、英語を習得する近道だと言えます。

 

 

リード・アンド・ルックアップとは


シャドウイングとともにぜひ実践してもらいたいトレーニングが、リード・アンド・ルックアップ(read and look up)と呼ばれる音読です。普通の音読とは異なるプロセスを経て音読を行います。

 

 

【1文(または1フレーズ)を黙読】 read 

          ↓

【顔を上げて音読】 look up and read aloud

 

 

文が長ければ長いほど音読が難しくなり、音声情報を頭の中に留めておくことが難しいことが感じられる作業です。このリード・アンド・ルックアップは、いわゆる「直前に見聞きした英語を一時的に頭の中に保存し、それをすぐに口頭で再現するという訓練」です。思った以上に難しく、文字を見ながらの音読に慣れている人は、なかなかスラスラと英文を言えません。ためしに、下の英文をリード・アンド・ルックアップしてみましょう。

 

 

My mother made some sandwiches while I was brushing my teeth.

 

 

難しいでしょうか?「こんなの簡単じゃないか」と思ったなら、次の英文をリード・アンド・ルックアップしてみましょう。

 

 

My father won't come home at 5 o'clock this evening because he said he would go out and drink with his colleagues tonight.

 

 

いかがですか?前の英文をやさしく感じた人も、少しは手ごたえがあったのではないでしょうか。この英文をリード・アンド・ルックアップするには、それなりの工夫がいります。

リード・アンド・ルックアップをする際に重要なことは、その英文の意味や文法構造を理解した上で行うということです。私たちは長い言葉を記憶する際、ただ単に意味のない文字や音声の羅列を頭に格納しようとしているわけではありません。長い文や発話は、小さい単位に分解して、覚えやすいように記憶しています。上記の英文も、例えば、次のような感じで分解されて記憶されていることが多いと考えられます。

 

 

/My father won't come home「父は家に帰ってこない」/
 
/at 5 o'clock this evening 「夕方5時には」/

/because he said「なぜなら次のように言ったから」/

/he would go out and drink「飲みに出かけてくると」/

/with his colleagues tonight「今夜同僚と一緒に」/

 

 

上の分解方法は一例ですが(もっと細かく分けることも可能)、このような意味の塊(チャンクといいます)は非常に覚えやすく、語順などの文法的知識と合わせて、文字を見なくても直前に見聞きした英文を再現しやすくなります。

上記の意味と語順を考えながらもう一度チャレンジしたら、意外と簡単にリード・アンド・ルックアップできた人も多いのではないでしょうか?さきほどのシャドウイングによって音声知識を鍛えた状態で、このリード・アンド・ルックアップを実践すれば、英会話のベースになる能力が身につきます。

しかし、何度もいいますが、リード・アンド・ルックアップをする場合は、必ず意味を考えながら行ってください。特に、読み上げる英語が

 

①誰が  ②誰に対して  ③どんな状況で

 

使用した英語なのかを常に考えて音読をしていってもらいたいと思います。

こうしたトレーニングを繰り返した英語は、いずれは一時的な記憶でなく長い間忘れることのない知識になります。長い間忘れることのない英語は、英語を使用する上で非常に強い味方になります。「この英語は実際に使う」「こんな英語は使わない」といった判断が徐々にできるようになります。こういった判断ができるようになるためには、膨大なデータが必要ですが、特に英語を「話す」「書く」ことが求められる場合は必要な知識になります。頭の中で長期的に記憶されている実際の英語のデータを「メンタル・コーパス(mental corpus)」と名付けることにします。このメンタル・コーパスについては次回にお話したいと思います。


takeondo
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都内の私立学校に勤務する英語教師(英語科教諭)。学生時代に英語音声に魅了され、英語教師の道へ。とりわけ関心があるのは、英語のプロソディ(超分節音的側面)とよばれるリズム、イントネーションなど。英語朗読、英語落語にも興味があります。 Certificate of Proficiency in the Phonetics of English 2nd Class 趣味:囲碁(四段)、ランニング(ハーフ1時間30分/フル3時間40分)

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