大学院生時代に、松坂ヒロシ先生に次のような質問をしたことがあります。
今までに出会った海外在住経験など特別なバックグラウンドを持たない方で、英語の発音が最も美しいと思う方はどなたですか?
翌週の授業の最後に、あるMDの音源を聞かせてくださいました。
水庭進さん
音源は戦時中から戦後にかけて活躍された水庭進さんというNHK国際放送の元英語アナウンサーの方のもので、インドの作家Rabindranath Tagoreについて紹介している朗読でした。水庭さんの英語は、往年のBBCのアナウンサーや上流階級の人たちが使っていた一昔前のReceived Pronunciation (RP/容認発音)と言えるアクセントでした。松坂先生は、「2、3カ所ミスっているが、それ以外ネイティブのBBCアナウンサーとほとんど違いがわからない」と評していました。
実際その時に水庭さんの英語を聞いた時、大変大きな衝撃を受けたことをよく覚えています。その時の衝撃は大変大きく、水庭さんが読んだTagoreの朗読は、いまでも暗唱することができます。みなさんにも水庭さんの朗読をぜひ聞いていただきたいのですが、公開することはできませんので、私ができる限り水庭さん風に朗読したものを聞いていただこうと思います。
Tagore was born in 1861 in Bengal India, the son of a very distinguished family, a fact mentioned in all books dealing with his life and his works. His grandfather, for instance, was nicknamed ‘Prince’, and was admired widely for his noble and dignified attitude, while his father was called ‘a great prophet’ for the unbiased and lofty judgement.
出典:『水庭進の英語街道をゆく』
実際の水庭進さんの朗読は遥かにすばらしいものですが、水庭さんの英語の雰囲気が少しでも伝わればと思います。
水庭さんは、巣鴨高校の学生時代に、前述の五十嵐新次郎に直接英語を教わる機会があったそうです。その後は東京外国語大学で学ばれ、大学卒業後は師である五十嵐新次郎に声をかけられたこともありNHK国際放送のアナウンス部で働くようになったことが著書の『水庭進の英語街道をゆく』に書かれています。この本は絶版になってしまいましたが、別売りのカセットテープにはアナウンサー時代のすばらしい朗読が収録されています。
水庭進さんは、いわゆる「国産生え抜きの英語アナウンサー」と言うことができるかもしれません。戦時中から戦後の慌ただしい時代にかけて、このようなすばらしい英語アナウンサーが活躍されていたことは、現在英語を教えたり学んだりしている私たちにとってとても励みになります。
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