『TOEFL iBTテスト必修英文法50:基礎固めからハイスコア獲得のための』(小倉雅明 著)
なんとなく,リベラルアーツ的な教養教育を英語で施そうという流れが,教育界を席巻しているように思いますが,大学生くらいになってTOEFLを受験しなければならない英語学習者は多いのではないでしょうか.所属している学会でご一緒させていただいている,信頼のおける先生による著書を紹介します.
著者はお若くしてすでに著書を数冊出版されている優秀な先生です.初めてお会いした時,その話される英語がとても美しかったので,いろいろと伺ってしまいました.海外在住経験などはなく,海外ドラマなどを徹底的に暗唱などして身につけたといわれるその英語は,私のようなマニアの英語学習者・英語教育者を一瞬で魅了してしまいました.コーパスなどを用いて辞書学の研究をされています.
本書は著者のすぐれた外国語学習観に基づく,TOEFLテスト受験のために必要な文法項目を扱った参考書です.TOEFL iBTにはいわゆる文法問題というのはありませんが,受験に必要とされる最低限の文法知識を網羅しているように思います.TOEFL iBT対策の単なる試験対策本にとどまらず,TOEFL ITPの対策,さらには英語の文法知識を純粋にブラッシュアップしたいという学習者にも向いている本だと思いました.50 unitで構成されており,各Unitは2ページの解説と2ページの演習問題と解答でできています.テイエス企画の本全般に言えることですが,レイアウトがとても読みやすい作りになっています.例文も難しすぎず,覚えやすいものが多いと思います.
本書には10のコラムが挿入されており,一貫して「外国語学習に容易な公式などはなく,多くの現象に触れて検証していく必要がある」ことを説いています.当たり前といえばそうなのですが,近年は英語教育が加熱しすぎているせいか安易な方向に導くような言説が絶えません.本書のコラムはそんな風潮に対して警鐘をならしつつ,外国語学習の「奥深さ」を語りながら学習者が歩むべき方向性を示してくれているように思います.
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