暗唱のススメ①:Tagore


自分自身の英語学習歴を振り返ってみると,「精読」と「速読」どちらもやってきたような気がしますが,精読もそこそこやってきた自信があります.外国語教育において,精読の「丁寧に読む」というのはどのくらい「丁寧」なのだろうかと少し考えてみました.

 

精読よりもていねいな素材の味わい方,は何であろうかと考えてみると,やはり何度も声に出して読むことでした.そして音読などを通して丁寧に素材を学習しているうちに最終的には暗記してしまう,そういった経験がある人も多いのではないでしょうか.自分の場合は「よし,こいつを暗記してやろう!」とすごんで取り組んだことはあまりなく,「この文章いいなぁ」,「この音声いいなぁ」と思ったものを朗読やリードアンドルックアップをしていくうちに自然と覚えてしまったものがほとんどでした.

 

最近,この「暗唱」についてあれこれ考えてみたのですが,外国語学習は多かれ少なかれ「暗唱の集大成」なんじゃないかなと思うようになりました.暗唱までの過程でリードアンドルックアップなんかがでてきたりするわけで,「たくさん英文を覚えている人≒英語ができる人」のような等式はわりと当たっているんじゃないかなと思うこともあります.

 

学生時代に自分が暗唱してきた素材はどんなものがあっただろうと考えてみたら,過去のエントリーにも書いた元NHK国際放送アナウンサーの水庭進さんがご著書で紹介されていたものがありました(英語達人列伝⑤:水庭進さん).水庭さんについては,ウィキペディアでは以下のように紹介されています.

 

NHKからイギリスBBCに赴任するまで日本から海外に一歩も出ることなく英語を身につけたが、その格調高いイギリス英語の発音を聞いたイギリス人(BBCからの交換職員)が、BBCのアナウンサーより上手だと話したと言う。(小林健人『消えた富士』牧歌舎、2009年、p96(孫引きです…))

 

残念ながら,水庭さんは昨年の6月にお亡くなりになられたようですが,すごい方だったというお話をご本人と関係のあった方々から伺ったことがあります.以前の記事の中でも紹介しましたが,水庭さんの英語はひと昔前のBBCのアナウンサーのような発音です.具体的な特徴のひとつとして,母音間のrの発音が「はじき音(flapped r)」になっているというのがあります.日本人でこうした英語を話す人は私の周りには皆無なのですが,学生時代に講演会で聞いた今井邦彦先生の英語はこのflapped rを使って話されていたと思います(詳しくは『ファンダメンタル音声学』のCDで先生の肉声を聞くことができるのでご参照ください).

 

以前私が書いた記事でも水庭さんのご著書で紹介されている「インド人作家のタゴールを紹介する文章」の一部を朗読しましたが,今回は全部読んでみようと思います(以前は全部覚えていましたが,忘れている部分もあったので原稿を読みながら録音しました).

 

Rabindranath Tagore

(Tagore reciting a poem)

You have heard the voice of Sir Tagore when he was reciting one of his own poems.

Tagore was born in 1861 in Bengal India, the son of a very distinguished family, a fact mentioned in all books dealing with his life and his works. His grandfather, for instance, was nicknamed ‘Prince’, and was admired widely for his noble and dignified attitude, while his father was called ‘a great prophet’ for the unbiased and lofty judgement.

Tagore’s eldest brother, on the other hand, was a great philosopher. Many prominent statesmen, religious leaders, musicians and artists have come from the same family. And Tagore’s greatness as a philosopher and a man of religion and his extraordinary talent in art and poetry may be attributed to heredity.

Already at the age of eleven, Tagore had a thorough knowledge of Sanskrit, English and Bengali. He produced a deep impression on the audience when he recited a patriotic poem he himself had written at a Hindu festival, which in those days typified the mounting independent movement. It was Tagore’s firm belief that all human beings were born free and equal. He was therefore up against the class distinction, racial prejudice, the political subjection of India under British rule and inequality between Indian men and women. He appealed to his countrymen in vigorous but convincing words that they should immediately put an end to all such injustices and discriminative treatments.

To the voiceless

To the tired

And to the stupefied,

Must we give voice to speak out.

The minds which have withered,

which have weakened and driven to despair,

must be inspired with the new hopes.

Raise your head now,

be united and stand up together to fight.

Those whom you are afraid of

are trembling more violently than you are,

with the guilt they have committed.

As soon as you stand up to fight,

they are sure to beat a retreat.

青字の語は,それぞれthe, unequality, injusticesと聞こえたので訂正して記しています.

 

水庭さんが朗読した当時の録音の状態を再現するため(&自分の発音をごまかすためw),エフェクトをかけて編集しました.冒頭のタゴールの肉声はこちらのYoutube(THE VOICE OF RABINDRANATH)のものの一部を利用させていただきました.最後のBGMはDOVA-SYNDROMEというフリーのBGM素材のサイトの「悲しみの大海」という曲を使用させていただきました.

 

この文章から学んだ表現は自分の中で血肉となって比較的よく覚えています.つまり,「暗唱は時間がかかるがかなりの学習効果は得られる」と考えています.そらんじて口からスラスラ出てくるような表現をたくさん増やすためには,暗唱できるまで徹底して精読,音読,リードアンドルックアップを繰り返す,こんな古典的なやり方も私が自信を持っておススメする英語学習法です.


takeondo
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都内の私立学校に勤務する英語教師(英語科教諭)。学生時代に英語音声に魅了され、英語教師の道へ。とりわけ関心があるのは、英語のプロソディ(超分節音的側面)とよばれるリズム、イントネーションなど。英語朗読、英語落語にも興味があります。 Certificate of Proficiency in the Phonetics of English 2nd Class 趣味:囲碁(四段)、ランニング(ハーフ1時間30分/フル3時間40分)

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