音読や暗唱から得られるもの:リードアンドルックアップのススメ


フルタイムの英語教師になって13年目に突入しました.中1〜高3の6年間同じ生徒を担当するサイクルを2回やりました.学生の頃にやっていた塾講師時代を含めると19年間も中高生に英語を教えてきたことになりますが,時間が経つのは本当に早いです.

 

この19年を振り返ってみて生徒から受けた質問は多くあったのですが,一番多かったのが「英語はどうやって勉強したらいいのですか?」という漠然としたものでした.「すぐに効果が出る特効薬などないよ」というやや冷たい答えをしたことも多かったのですが,本気で長期的に英語学習に挑む覚悟がある生徒には,丁寧に答えていました.

 

本ブログのタイトルからもわかるように,私は自分の生徒により音声に意識を向けて英語学習に取り組んでもらいたいと考えています.なので,上の質問に端的に答えるとすれば「音読」ということになるでしょうか.

 

音読をする目的には大きく分けて以下のような2つがあると思っています.

 

  1. 文字情報を聞き手に間接的に伝える
  2. 文字情報から得られる形式(文法)や意味(語彙)を内在化させる

 

言語は,相手にメッセージを伝えるため,に存在しているわけですので,英語学習という文脈でも最終的には1を目指すことになると思います.しかし,学習の初期段階(一般的な日本の中高生が直面している学習ステージ)では,2の目的で音読をすることがほとんどなのではと思います.私は,英語学習の初期段階における学習のほとんどは文法と語彙の習得だと考えているので,これらを効率的に内在化させるために音読は大切だと思っています.

 

2で内在化される知識とは,自分の中の「言語使用の引き出し」のようなものからいつでも活用できる知識(readily accecible knowledge)のようなものだと考えていただけたらと思います.つまり,英語を話したり書いたりする際に,ある程度まとまった文法や語彙の知識としてすぐに活用できる知識,また,話したり書いたりする知識とまでは昇華していないけれど,聞いたり読んだりした時にすぐに比較・参照して違和感のある表現やいい表現などを判断する際に使われる知識,とすることにします.

 

こうした「readilyにaccecibleな言語知識」をどうやったら効率的に内在化することができるのかということを考えた時,視覚的な印象(visual impressions)を通してではなく,聴覚的な印象(auditory impressions)を通して覚えていくほうが圧倒的に効率的だと言えます.このことは,すべての自然言語の主要な媒体が「音声」であり,「記録」という二次的な目的で視覚に依存する媒体として「文字」が生まれたことを考えても明らかだと思います.

 

当たり前のことですが,文字情報を音声に変換する作業の音読と文字は切っても切り離せない関係にあるので,音読の際に視覚的な影響は完全に取り去ることはできません.しかし,先ほど述べたような知識を内在化させるような目的で行う音読において,できるだけ視覚から得られる影響(特に悪い影響)を取り去って,聴覚的な印象に委ねることが肝要だと思っています.そうすることで,覚えた言語形式を比較的すばやく参照したり引き出したりすることができると思っています.

 

視覚的な影響を抑えるために行われている音読にリードアンドルックアップがあります.これは,スラッシュリーディングなどチャンク単位(まとまった意味単位)の英語を一時的に頭の中に入れ(read),声に出している際は視線を上げて文字から目をそらし(look up),文字情報を音声化させるトレーニングです.文字を見ながら音読してしまうと,とりわけ初学者は文構造や意味を考えないで音声化してしまうこともあるので,それを防ぐためにはリードアンドルックアップは効果的だと思います.

 

次に,リードアンドルックアップの流れを以下の文を例にシミュレーションしてみることにします.文頭からピリオドまで一息でリードアンドルックアップできるでしょうか.

 

The fact that he didn’t give her anything for her birthday remained deeply in her mind.

 

ある程度英語力のある人ならばできるかと思いますが,おそらく一般的な高校生ならば少し時間がかかることと思います.高校生にはこのくらいの長さの文を一息でリードアンドルックアップできるようになるまで,頑張って練習をしてもらいたいと思っていますが,難しいと感じる生徒には,以下のようなスモールステップでやらせてみると効果的かと思います.

 

  1. he didn’t give her anything
  2. for her birthday
  3. he didn’t give her anything for her birthday
  4. the fact that he didn’t give her anything for her birthday
  5. deeply in her mind
  6. remained deeply in her mind
  7. The fact that he didn’t give her anything for her birthday remained deeply in her mind.

 

最初に小さなチャンクでリードアンドルックアップをできるようにさせます.徐々に長いチャンクで言わせるようにして,最終的に長いワンセンテンスをリードアンドルックアップできるように導きます.なかなか面倒なプロセスで時間はかかりますが,どうやって英文を覚えたらいいかわからない生徒にとって,こうしたスモールステップの音読指導は効果覿面です.

 

リードアンドルックアップは文字を見ないで音読することに意味があるので以下のように和文だけを見て瞬間英作文的にやらせるのも効果があるかもしれません.

 

  1. 彼は彼女に何もあげなかった(he…)
  2. 彼女の誕生日に(for…)
  3. 彼は彼女の誕生日に何もあげなかった(he…)
  4. 彼が彼女の誕生日に何もあげなかったという事実(the fact…)
  5. 彼女の心の奥深くに(deeply…)
  6. 彼女の心の奥深くに残った(remained…)
  7. 彼が彼女の誕生日に何もあげなかったという事実は彼女の心に深く残った.(The fact…)

 

和文だけだとなかなか英語がでてこないこともあるので,最初の1〜2語は与えてあります.このようなリードアンドルックアップの指導をしていると,最終的に時間をかければセンテンスを暗唱できるようになります.リードアンドルックアップは正しい暗唱の方法としておすすめできます.英語学習とは大なり小なり「暗唱の集大成」だと思っていますので,自信を持ってこの方法をおすすめします.

 

最後に,例に上げたセンテンスをQuizletにしましたので,こちら(https://quizlet.com/_4t25it

 

(2018年5月3日動画ファイルを追加)


takeondo
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都内の私立学校に勤務する英語教師(英語科教諭)。学生時代に英語音声に魅了され、英語教師の道へ。とりわけ関心があるのは、英語のプロソディ(超分節音的側面)とよばれるリズム、イントネーションなど。英語朗読、英語落語にも興味があります。 Certificate of Proficiency in the Phonetics of English 2nd Class 趣味:囲碁(四段)、ランニング(ハーフ1時間30分/フル3時間40分)

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