核を意識した英文朗読を②


相手に意図をしっかりと伝えるための朗読方法として,「核を意識した朗読」を提案させていただいています。はじめてご覧になる方は前回の記事をご覧ください。現在私が使用しているElement English Communication Ⅱの抜粋から,ふたたび私の朗読をお示しします。

 

There is a lady in a coffee shop waiting for a friend. She is wearing a dress that seems to be new. Then a waiter comes along with a coffee. He somehow trips on something and spills the coffee all over her. Now her dress looks as though she has been fighting with a bull in a puddle of dirty water. She stares at her dress, then turns to the waiter, glares at him, and says in a loud voice, “Thank you very much!”

Do you think the lady really wanted to thank the waiter for soiling her dress? Was she looking for an excuse to go home without seeing her friend? Naturally, you would answer, “No way. She must have been extremely angry.” You may say so because she glared at the waiter while she spat out those words. In other words, it is the way she looked at him and the way she talked to him that helped you understand what her real intention was.

Element English Communication Ⅱ(啓林館)Lesson 1 ‘Beyond Words’より)

 

今回は第2文の読み方からお話ししていきたいと思います。

 

She is wearing a dress / that seems to be new.

 

一般的な朗読は上のようにグループを2つに分けて朗読することが多いと思います。旧情報として第1文で「レストランにいる女性」が聞き手の頭の中にある状態でこの文を読みます。情報として重要な要素は「(その女性が)ドレスを着ており,それが一見する限りでは新しいドレスだ」というものです。

関係詞には制限[限定]用法と非制限[継続]用法というものがありますが、書かれたものを音声化する朗読の場合は、たとえこの文のような制限[限定]用法でも、「非制限[継続]的な読み方」をすることはかなりあると思います。つまり、that seems to be newはa dressの意味を制限[限定]する修飾語ですので本来であれば’a dress that seems to be new’はひとつの意味のかたまりとして一息で発音されてもいいのですが、聞き手にしっかりと情報を伝えることを主眼とした朗読のようなタイプのスピーチでは、たとえ制限[限定]用法のものであっても、このように先行詞のところで核が表れることはよくあります。

そもそも、長い修飾語を名詞に後置する関係詞節というのは、制限[限定]用法であろうが非制限[継続]用法であろうが、「後ろに情報を追加する」という性質上、非制限的な呪縛からは逃れられないのかもしれません。

 

これに関係することで、私が生徒に意識させていることがあります。それは、音読を通して「先行詞+関係詞節」をひとつのかたまりとして意識させていることです。上の文で言えば、a dress that seems to be newというかたまりを一息で1〜2回読ませるといった程度のものです。具体的には以下のような読み方の練習をしています。

 

a dress that seems to be new

a dress that seems to be new

 

ひとつひとつの情報をしっかりと伝えようとする類いの朗読などではこのよう読まれることはあまりないように思います。そうした朗読の場合は、dressとnewは共に情報構造上大切な語ですので、両方の語に核を置きます。しかし、中学高校生にとっては、情報構造よりも優先させなければいけないのが文構造です(文構造がわからなければ情報もへったくれもない?)ので、文構造上大切な読み方として上に示したような読み方で練習をさせるのはそれなりに意義のあることなのではと思っています。つまるところ、情報構造を重視するか、文構造を重視するかで、朗読のさせ方も変わってくるんですね。もちろん、情報構造を意識した朗読のほうが目指すべき最終形態であるのはいうまでもありません。

 

最初に私が読み上げた朗読のイントネーションを記述してみると以下のようになっていると思います。

she's wearing...

 

核音調はdressで下降上昇調、newで下降調を用いていますが、この私の朗読では、dressの最後のところで声が上がっていないかもしれません。感覚としては、「できるだけポーズは置かずに修飾語を素早く付け加える」といった感じで読んでいます。「まだ続くよ〜」という意思の表れはもしかしたらポーズの短さなどで代用しているのかもしれません。後ろに何かが続く場合、下降上昇調などの直前で声を少し上げる音調を用いるのがセオリーですが、いろいろな朗読を聞いていると必ずしもそうでないような気がします。

今回はこの辺で失礼します。

 

 

 


takeondo
About takeondo 57 Articles
英語教師。学生時代に英語音声に魅了され、英語教師の道へ。とりわけ関心があるのは、英語のプロソディ(超分節音的側面)とよばれるリズム、イントネーションなど。英語朗読、英語落語にも興味があります。 Certificate of Proficiency in the Phonetics of English 2nd Class 趣味:囲碁(四段)、ランニング(ハーフ1時間30分/フル3時間40分)

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