核を意識した英文朗読を③


しばらく書いていなかった英文朗読に関する投稿、第3回目となります。更新すると言ったまま遅れてしまいすみませんでした。前回までの内容に関してはリンク(第1回目第2回目)をご参照ください。以下、Element English Communication Ⅱ Lesson 1からの抜粋です。

 

There is a lady in a coffee shop waiting for a friend. She is wearing a dress that seems to be new. Then a waiter comes along with a coffee. He somehow trips on something and spills the coffee all over her. Now her dress looks as though she has been fighting with a bull in a puddle of dirty water. She stares at her dress, then turns to the waiter, glares at him, and says in a loud voice, “Thank you very much!”

Do you think the lady really wanted to thank the waiter for soiling her dress? Was she looking for an excuse to go home without seeing her friend? Naturally, you would answer, “No way. She must have been extremely angry.” You may say so because she glared at the waiter while she spat out those words. In other words, it is the way she looked at him and the way she talked to him that helped you understand what her real intention was.

Element English Communication Ⅱ(啓林館)Lesson 1 ‘Beyond Words’より)

 

今回は第3文を見てみます。

 

(1) Then a waiter comes along with a coffee.

「それからウェイターがコーヒーを持ってやって来た」

 

セオリー通りなら、機能語は弱く、内容語はフォーカスを当ててしっかり発音するということ。そもそも内容語というのは一般的には「《言》名詞・動詞・形容詞など、文法的な機能はほとんどもたず、主として語彙的意味を表す語(スーパー大辞林)」のように定義されており、「名詞・動詞・形容詞など」と曖昧な表現をしています。簡単にいえば、「具体的な意味を伴った語」とでもいいましょうか。以前あるTESOLの動画を見ていたら、学生を指名してホワイトボードまで来させて「waiterの絵を描いてみよう」という指示を出して、「うまく描けたら内容語」みたいな教え方をしていたので、なるほどなぁと思ったことがあります。当然のことながら機能語である”a”とか”the”などはうまく描けないわけです。英語の内容語はざっくりいうと「名詞、一般動詞、形容詞、そして意味内容を伴った副詞」あたり。となると、(1)の英文の内容語は以下のような感じになるはずです。

 

  • waiter
  • comes
  • along
  • coffee

 

ここで、ひとつ気をつけなければならないのが、一般動詞のcomeと副詞のalongは”come along「やって来る」”というひとつの意味を表す句動詞であるということ。この2単語はひとつのかたまり(チャンク)ですので、あたかもcomealongという1語の動詞であるかのごとく読まなければなりません。句動詞のストレスパターンはcarry ON、watch OUT、というように後ろの副詞の部分に強勢が来ますので、ここでいう内容語としての一般動詞のcomeは別々にストレスを付与するのではなく、come ALONGのようにしなければなりません。すると、(1)の英文における内容語は以下のようになるかと思います。

 

  • waiter
  • (comes) along
  • coffee

 

と、ここまでがセオリー通りの内容語のピックアップ。問題はここから。核はどこに置くべきか。

 

通常ならば、ひとつの音調群(いろいろな呼び方があり意味群などともいいます)の最後の内容語に核音調が来ることになっており、(1)の英文ではそれはcoffeeということになります。しかし、第3文を読んでいる時点において、「コーヒー店にいること」はすでにわかっており、「ウェイターがコーヒーを持って来るであろう」ことも容易に想像がつきますから、わざわざわかっている単語に堂々と核音調を置くことにやや抵抗があるわけです。そこでおそらく私が選んだイントネーションパターンは次のようなものです(やや揺れがあります)。

 

a waiter comes along

 

 

上記の例では、ひかえめですがcoffeeの第1音節に核音調(低下降調)を置いています。最初の強勢のある音節から核音調のある音節までを頭部(head)と呼ばれますが、頭部にはいくつかのパターンがあります。上の例では緑色のマーカーで示した箇所が頭部になります。頭部内で強勢のある音節が出てくるたびに毎回音程が下がっており、漸次下降頭部(stepping head)などと呼ばれています。結果、核音調のcoffeeにたどり着くまでに音程はだいぶ低くなっており、coffeeにフォーカスを当てているものの、控えめな感じの当て方になっています。

 

核音調をどこに置くべきかということに関して、明確な答えはありません。上の朗読では、「coffeeに全くフォーカスを当てないのもおかしいけれど、フォーカスを当てすぎてもいけない」という微妙な気持ちがあったためこのようなイントネーションパターンを選んだのかもしれません。また、次のようなイントネーションもあるかもしれません。

 

a waiter comes along

この場合は、「音調群の中には核音調は1つのみ」という制約があるので、waiterとcoffeeを別々にフォーカスを当てるために音調群を2つに分けました。その場合も発話全体として、情報の価値はwaiter > coffeeだと思いますので、waiterではよりフォーカスの当たる高下降調(high-fall)を、coffeeにはやや控えめな低下降調(low-fall)の核音調を当てました。

 

 

(1′)と(1”)の音声を聞いた感じはあまり違いは感じられないかもしれません。自分だったらこう読むだろうという読み方をいろいろと理屈をつけて説明してみました。自分は英語母語話者ではありませんが、(1)の英文では最後のcoffeeにはそんなにフォーカスを当てなくてもいいのではと感じています。朗読が上手な英語母語話者の朗読を聞いていると、こうした情報の価値を一瞬で判断して、朗読に反映させることができているように思います。また、こうしたことは、朗読だけでなく日常会話でも言えることだと思います(むしろ日常会話のほうがはっきりしているか?)。おそらく私たちの無意識のレベルで「情報の価値の経済性」みたいなものが働いており、無駄な要素を省いたり、情報価値の低いものは控えめに提示するなどしているのではないでしょうか。


takeondo
About takeondo 48 Articles
都内の私立学校に勤務する英語教師(英語科教諭)。学生時代に英語音声に魅了され、英語教師の道へ。とりわけ関心があるのは、英語のプロソディ(超分節音的側面)とよばれるリズム、イントネーションなど。英語朗読、英語落語にも興味があります。 Certificate of Proficiency in the Phonetics of English 2nd Class 趣味:囲碁(四段)、ランニング(ハーフ1時間30分/フル3時間40分)

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